学部・大学院FACULTY TAISHO
宗教学専攻
【宗教学専攻】大正大学宗教学会2023年度秋期大会が開催されました
2024年2月23日(金)、大正大学2号館人文学科閲覧室におきまして、2023年度の大正大学宗教学会秋期大会が開催されました。
今大会は、今年度修士論文を提出した大学院生の河合咲弥さん、尹紹恒さんの発表に加え、髙瀨顕功先生(大正大学専任講師)、小川有閑先生(大正大学地域構想研究所BSR推進センター主幹研究員)に登壇いただきました。
学会の前半は、修士論文の内容に基づく院生の研究発表です。
河合さんの論題は、「静岡ムスリム協会の活動から見るコミュニティの成長」です。河合さんは、静岡ムスリム協会の事務局長のライフヒストリーを明らかにしつつ、先行研究で述べられてきた、「結婚を機に改宗した日本人ムスリマ」と本インフォーマントの異なる点を指摘しました。さらに、同ムスリム協会の成長の過程が彼女のライフヒストリーの一部であるとし、彼女の独自性について論じました。
尹さんは、「広西チワン族の葬送儀礼にみる少数民族文化の漢化」という論題で、中国・チワン族の伝統的な葬儀プログラムと改革開放後の葬儀プログラムの変容について発表しました。尹さんは、自身が属するチワン族を事例に「少数民族文化の漢化」を研究してきました。改革開放以後、少数民族集団は、漢族の影響を不断に受容しながら文化触変を行っていることが、本研究によって浮き彫りになったと述べました。
後半は、本学の先生方に仏教寺院の現状に関する最新の調査に基づいた研究発表を行っていただきました。
髙瀬先生のご発表は、「コロナ禍が寺院に与えた影響―経年調査から見る葬送儀礼の変化―」という論題で、大正大学地域構想研究所BSR推進センターが行った「寺院における新型コロナウイルスによる影響とその対応に関する調査」の成果に基づく内容です。髙瀨先生は、これまで計五回実施した調査結果を比較検討され、新型コロナウイルスの流行が寺院の葬送儀礼に与えた影響について、最新の分析状況をご報告されました。
小川先生には「失われゆく月参りの実態把握を目指して」という論題でご報告いただきました。「月参り」とは、家の直近の死者の月命日に、僧侶が檀家宅を訪問してお経をあげる慣習のことです。この慣習が地域包括ケアシステムと親和性があるのでは、という仮説のもと、小川先生は諸宗派の全国の月参りの実施状況を調査されました。そこから、月参りが読経という宗教的行為と同等に、遺族との会話に比重が置かれていたこと、さらに「家」の形の変化により、この慣習は将来失われていく可能性があると述べられていました。
いずれの発表も活発な質疑応答があり、貴重な学びの機会となりました。学外からも各方面の先生方、他大学院生の方々等、多数ご参加いただき、皆様のご協力のもと無事に学会を終えることができました。
発表してくださった髙瀨顕功先生、小川有閑先生、本当にありがとうございました。また、参加者の先生方、皆様、本会の先生方、準備・運営に関わった院生各位にも御礼申し上げます。
ご挨拶をなさる村上先生(写真左)、司会の寺田先生(左)と発表中の髙瀨先生(右)
閉会後は、コロナ禍以降久しぶりとなる懇親会が行われました。先生方やOBOG、院生など様々な方々が出席しました。発表に関する議論の続きなどの様々な話題が出され、盛会のうちに終了いたしました。
大正大学宗教学会ではこのような研究発表を行う機会を設けています。どのような研究が行われているかを学べる場なので、興味・関心のある方は是非ご参加ください。
(文責:尹紹恒、河合咲弥)
研究室広報追記:なお当日の模様は、『仏教タイムス』(2024年3月14日3025号)にもレポートされています。是非、ご覧下さい。