学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

宗教学専攻

【宗教学専攻】草津ハンセン病療養施設フィールドワーク② 聖バルナバミッション編

宗教思想史特論では、宗教的な意味が付与された特有の歴史を持つ感染病であるハンセン病を対象とし、病いと宗教をテーマに講義を行なっています。ハンセン病をめぐる映画や文献の検討だけではなく、関連施設を訪問し病いと宗教との関係について学びを深めてきました。

今回は62829日の12日、弓山達也先生と院生4名で草津にて関連施設を訪問しました。

講義の詳細と1日目の様子は前回のブログをご覧ください。

2日目は、草津聖バルナバ教会と併設されたリーかあさま記念館を訪問しました。

リーかあさま記念館は、明治中期から昭和初期にかけて存在したハンセン病患者の自治区であった湯ノ澤地区と聖バルナバミッション、そして聖バルナバミッションを立ち上げ「かあさま」と慕われていたコーンウォール・リー女史の歴史を伝えるため、2012年に開設されました。

リーかあさま記念館においては、職員の方に詳細に展示物と歴史について解説をしていただきながら資料を見学しました。

湯ノ澤は草津町の東のはずれに位置しています。皮膚病に効くとされる草津温泉に集まっていた多くのハンセン病患者が、草津温泉に一般の観光客らの増加に伴い、湯ノ澤地区へと移転を迫られました。

英国聖公会福音宣布教会から派遣され宣教師として来日していたメアリ・ヘレナ・コーンウォール・リー女史は、1915年に草津を訪れるとその地に集まっていたハンセン病患者たちの現状に心を痛め、1916年に草津の湯ノ澤地区に集まり生活を送っていたハンセン病患者のため、聖バルナバミッションを立ち上げました。

湯ノ澤地区では最も多い時期には800人ほどの人が暮らしていたとされていますが、その中の500人もの人々がキリスト教徒であったと言います。

当時の草津、湯ノ澤の歴史や地理的な解説を受けた上でコーンウォール・リー女史に関する展示資料を拝観することでその人柄や功績の大きさを改めて問い直すことができる貴重な経験となりました。

その後は、現在聖バルナバミッションのホームの中で唯一建物が残っている聖マーガレット館を拝見しました。聖マーガレット館は1924年に建設され、1936年に一度火事で消失されましたが、直ぐに再建され現在に至っています。現在は北関東教区の研修所となっており、中に入ることはできませんが、当時の貴重な建物を見てハンセン病患者とコーンウォール・リー女史の生活に想いを馳せることができました。

最後は、頌徳公園にてコーンウォール・リー女史の胸像前で記念撮影をしました。

今回の行程では、栗生楽生園→重監房資料館→リーかあさま記念館と時代を遡る形で施設を見学しました。

重監房から普段から使用する生活必需品まで、様々な展示物を身近で拝観することで、患者たちの送ってきた生活の空気感とその歴史の生々しさを目の当たりにしました。

宗教とハンセン病が結びつくことで生じた偏見や差別を学んだ上で、その宗教がハンセン病患者たちに希望を与えていたという事実にも触れ、その功罪と救いの歴史から、改めて社会における宗教の意味を問い直すことに繋がりました。

現地で実際の資料に触れつつその歴史を振り返ることで、新たな知見を得て更なる問いかけを行うことができたのは貴重な経験となりました。

最後にはなりますが、今回の現地研修にてお世話になった皆様、貴重なお時間をいただきありがとうございました。

(文責:江原知華)

GO TOP