学部・大学院FACULTY TAISHO
社会福祉学科
卒業論文・卒業研究口述試問(発表会)が開催されました
社会福祉学科では、4年生になると、卒業論文・卒業研究(以下、卒論・卒研)の執筆に取組みます。本年度は、10月23日(金)が提出期限でしたが、その発表会が11月14日(土)に行われました。
4年生は、発表会でパワーポイントを使って、7分間のプレゼンテーションをします(グループの場合は10分)。プレゼンは、教員や3年生が聴講する中で行われます。卒論・卒研を評価するための「口述試問」でもあるため、副査の教員からコメントや質問があります。
卒論・卒研は、4年間の学業の集大成といえるでしょう。とはいえ、単にまとめればいいという訳ではありません。「学士(社会福祉学)」の学位に相応しい論文の水準が求められます。
そのため、1~2年次の学習をベースに、3年次より「プロジェクト研究」(いわゆるゼミ。通称“プロ研”)での教員の指導が本格化し、4年次に執筆にかかります。教員は、プロ研の時間に、論文の書き方、文献の読み方、発表の仕方、調査方法などを伝えます。
ちなみに、今回私のゼミ生13名(実は松本ゼミ1期生!)は、次のタイトルで書き上げました(うち、2人はグループで執筆)。
・生活保護のイメージと最低生活の実態
・生活保護および生活困窮者支援における支援の現状と課題~川崎市と印西市の取組みの比較検討を中心に~
・社会的排除から社会的包摂にするには~ある町の取り組み~
・女性の貧困の現状と課題~女性の貧困対策について考える~
・ひとり親家庭の貧困問題についての一考察~貧困から抜け出す支援とは何か~
・「貧困の連鎖」防止のための課題と支援
・野宿者支援における民間団体の支援の役割
・野宿者への自立支援の現状と課題~市川ガンバの会の活動を通して~
・野宿者の現状と支援のあり方~民間団体への参加と野宿生活体験を通して~
・日本の格差社会化の実態と是正方針の展望について
・これからの福祉車両への期待を考える
・障がい者スポーツの現状と課題、さらなる発展に向けて
私の専門は貧困問題や社会保障ですので、貧困を始め、野宿者、生活保護、格差、所得保障、社会的排除、生活困窮者をキーワードとして執筆した学生が多くなっています。福祉車両や障がい者スポーツがテーマの学生には、所得保障、利用者負担およびその軽減策について論文の中で触れてもらっています。
私のゼミでは、卒論・卒研執筆の基礎体力作りとして、3年次に貧困や格差に関する文献を読みました。それに加え、野宿者の置かれた状況や民間支援団体の活動を理解するために、「ひとさじの会」(浅草上野)や「TENOHASI(てのはし)」(池袋)、寿町での医療生活相談(横浜市中区)に参加しました。本やネットの情報だけでは、貧困の理解には限界があるからです。
さて、上記の論文のタイトルからも分かるように、私の指導を受けながら調査票を作成し、各自で行政機関、民間団体、関係者にインタビューやアンケートをした学生が多くいました。
そのほか、ある学生は、生活保護費相当額で1ヶ月生活することにより、生活保護利用者の生活実態を明らかに、支援のあり方を探究しました。また、ある学生は、駅や河川敷での野宿生活体験をもとに、野宿者の過酷な生活実態を明らかにしました。このように、一般には実施が困難と思われている調査に果敢に取り組んだ学生もいます。
他のゼミ生の副査としても、卒論・卒研を読みプレゼンを聞きましたが、やはり、文献を丁寧に読み込んだり、調査でテーマを掘り下げ考察した学生の論文は際だっていました。今回、学問の世界を知り、学術研究の手法が分かり始めたと思いますので、もし卒論・卒研の内容あるいは就職後に芽生えたテーマを、深め、発展させたいと思ったら、大学院に進学して修士論文を書くという道もあると思います。
いよいよ、4年生はあと4ヶ月弱で卒業です。卒論の執筆過程では、それぞれ苦労したと思いますが、それを人生のどこかで、バネや糧にして欲しいと願っています。
追記です。来年度からは、全員が3~5人程度のグループで執筆するスタイルに変ります。すでに現3年生は、テーマ(プロジェクト)に応じたグループで動いています(例えば、「子どもの貧困プロジェクト」や「高齢者の社会的孤立プロジェクト」といった具合に)。ぜひ、「学業の集大成」と自分で思えるような論文を書き上げて下さい。期待しています。
(松本 一郎)