学部・大学院FACULTY TAISHO
社会福祉学科
浄土宗公開シンポジウムに参加しました。
去る12月5日(木)本学で開催された浄土宗公開シンポジウムに、社会福祉学科から3つのゼミの3年生約30名が参加しました。このシンポジウムは、12月2日から6日まで浄土宗人権センターが本学で開催した『子どもの人権に関する人権啓発パネル展』に合わせて開催されたものです。
シンポジウムのテーマは『シングル家庭から考える子どもの貧困』です。法政大学大原社会問題研究所教授の藤原千沙氏が基調講演を、続くパネルディスカッションでは、皇學館大学准教授吉田明弘氏のコーディネートの下、本学講師の吉水岳彦氏、小川有閑氏がパネリストとして加わり、熱心な討議が展開されました。
基調講演では、近年子どもの貧困に注目が集まり、学習支援や子ども食堂など貧困によって生じている課題に対して支援が広がっているが、その一方でもっとマクロな視点から貧困の原因を探り根本的な解決を志向していくことが不可欠であるとの立場から、各種統計に基づき日本のシングル家庭がおかれている貧困の現状や社会保障の課題、そしてその解決策のヒントについてお話がありました。
続くパネルディスカッションでは、浄土宗僧侶で「ひとさじの会」を主宰している吉水氏からは、日頃行っている路上生活者への支援活動を通じて出会ってきた、貧困家庭の子どもたちの厳しい現実が紹介されました。そしてやはり浄土宗僧侶で「自死・自殺に向き合う僧侶の会」に関わっている小川氏からは、自死遺族の分かち合いの会や相談活動などの活動状況や、グリーフケアの大切さ、そして安心して悩める社会を目指すことなどが語られました。
吉田氏の巧みな進行により、参加学生も飛び入りでシンポジスト席に座り発言するなど、白熱したディスカッションとなり、とても深い学びができた公開シンポジウムでした。
以下に参加学生の感想から4人の感想を紹介しましょう。
Aさん:
今回シンポジウムに参加させていただき、私は子どもの貧困問題について、社会が変わらなければ解決できないと考えた。藤原さんの話にあった、「所得を得るために働きに出れば、子どものケアが失われる。子どものケアに時間を費やせば、所得を得る時間が失われる。」という言葉が印象に残っている。
子どもが親に甘えたいのは当たり前である。しかし、生活費を稼ぐため甘えさせてあげられないのが現状である。こんな社会で良いのだろうか。私はそうは思わない。子どものケアをしながらでも、生活が安定できるよう支援することがこれからの社会の課題ではないかと考えた。
Bさん:
今回のシンポジウムでは、諸外国と比較した子どもの貧困対策、そして、仏教という視点から貧困について考えることができた。
子どもの貧困対策については、OECD加盟国と日本を比較して、様々な面において貧困率が高いこと、社会の構造、そして、社会保障の給付は「まとめ支給」のままで良いのかということを聞き、卒業研究に役立てることができると感じた。
また、貧困については、「衣食住よりもお墓」「子どもの将来」「家庭環境」の話の中で初めて聞く内容が非常に多かった。梨を知らない子ども、大学にエレベーターがあることを初めて知る子ども、家出少女たちが「神待ち」という自分の親よりも良くしてくれる大人を待つ子どもがいることを吉水先生のお話から初めて知ることができ、一番衝撃を受けた。
貧困について深く考える機会は、非常に貴重な経験となった。
Cさん:
子どもの貧困問題について、世界と比較してみると、日本がこれほどまで深刻であることに驚いた。一人親世帯の貧困率が高いことは知っていたが、世界平均が31.6%に対し、日本は50.8%と半分に一人が貧困であることや、母子世帯の多くが働いているにも関わらず貧困に陥ってしまうという、他国ではなかなかない異例な状態が今の日本社会では起きていることを知り、講演でも挙げられていたが『なぜこのような社会になってしまったのか』と深く思った。現在の日本の貧困状況や打開策、また子どもを支える活動等、子どもの貧困について様々なことを考える大変良い機会となった。
Dさん:
今回のシンポジウムを通して、子どもの貧困問題について社会の仕組みとして考えるだけでなく、外国との比較など多角的に考えることが出来た。貧困を生み出す「悪者」とは何かを考えなければ、貧困そのものを緩和・解消できないという考えにはとても共感した。福祉を考えていく中で、サービスや居場所等の社会資源に目を向けてしまう。しかし、時間資源の活用について考えていくことは、現代の子育てにおいて極めて重要なものになると考えた。今回のシンポジウムで学んだことをしっかりと今後の卒業研究に活かしていきたいと思う。
(文責:髙橋一弘)