学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

哲学・宗教文化コース

今こそ哲学!②

(「今こそ哲学!①」からの続き)

サンデル教授の哲学が人気なのは、彼の思想が、こういった「自分さえよければいいのさ」という風潮に対抗するものだからというのが原因の1つだろう。
それはコミュニタリアニズムという思想で、皆で協力し合って社会を作り上げていくことを大切にする立場だ。
さらなる魅力は、彼はそういった自分の思想を学生に押しつけるのではなく、自分とは異なる思想・学生たちの意見も積極的に議論に取りこむところだ。
具体的な問題について、クラス全体で意見を交換する中で、学生がそれぞれ、自分が何気なしにもっていた価値観が何だったかに気づくというスタイルが評価されているのである。
 
このサンデル教授の授業スタイルは、大正大学の哲学・宗教文化コースの授業にも通じる。
僕(司馬)も、「なぜ、こうなってしまったのか」という問いを、学生が自分の力で問い抜くことを促し、現代の問題を基礎から考え直すために、「質問力(inquisitive mind)」を身につけることが、哲学教育だと考えている。
 
僕も授業では、ソクラテスからカント、ヘーゲル、キルケゴール、そしてフーコーといった哲学者を紹介する時、その思想がどういう時代状況の中で何を問題として形成されたのかをわかりやすく説明している。
そして、もしカントが生きていたら、現代の臓器移植の問題や宗教の問題をどう考えるだろうか、と問いかけて授業を進めている。
 
僕自身は、フッサールという哲学者の哲学(現象学)と仏教の中の唯識思想との比較を通じて、人間の意識がどうして「仮象」(本当はないのに、あると思い込んでしまうもの)に囚われてしまうのか、という問題を研究してきた。
「お金の価値」というものも、現代の「仮象」である。
人間は「仮象」なしには生きられない。しかし、その中で生きている限り、それが「仮象」であることに気づかないものである。
カント、ニーチェ、マルクスなどの思想が強烈なインパクトを持ち、今でも読み継がれているのは、彼らがその時代に当たり前とされていたことを「仮象」だと見破ったからだ。
 
現在の「哲学ブーム」も、これまでしがみついてきたものがどれも頼りにならないという思いを誰もが持つようになったことから発生している。
今こそ哲学が必要なのだ。
 
大正大学の哲学・宗教文化コース」は、学生が一人ひとり自分の力でものごとを基礎から考えていけるカリキュラムを組んでいる。
教員は、学生が「質問力(inquisitive mind)」を身につけ、どんな問題に直面しても自分で道を切り拓いていける社会人になれるよう全力で指導している。
皆さんが本コースの扉をたたいてくれることを心から願っている。
 
 

夏のオープンキャンパスでも、高校生の皆さんとお話する中で、「おおっ、哲学ファンが増えている!」とブームを実感しました。

そこで、おまけのクイズです。

下の図版は10人の哲学者の顔です。
さて、司馬先生が専門とするフッサールはどれでしょう?

800px-PortalPhilosophers.jpg

 

 

 

正解:一番右です。

ちなみに、左から、プラトン、アリストテレス、トマス・アクィナス、デカルト、ヒューム、カント、ヘーゲル、ニーチェ、フレーゲです。

だからなんだ? 哲学は思想だ、顔じゃない、と言われそうですが、哲学者の肖像画で有名なものは数が限られていますので、一度覚えておくといいかもしれません。

 

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