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宗教学専攻

【宗教学専攻】日本宗教学会第76回学術大会に参加しました③


 だいぶ時間が経過してしまいましたが、第1弾第2弾に引き続き、日本宗教学会第76回学術大会の報告第3弾(最終回)、パネルディスカッションの後編を紹介します。


▼第11部会「国体明徴運動下の社会と宗教―昭和10年前後を中心に―」

 第11部会では、本学の寺田喜朗先生をはじめ、藤田大誠先生(國學院大學)、高橋典史先生(東洋大学)、平山昇先生(九州産業大学)、小島伸之先生(上越教育大学)の計5名が登壇されました。
 本パネルは、国体明徴運動(天皇機関説を排撃するために右翼団体と在郷軍人が中心となって展開した運動)下である昭和101935)年前後の政治的・社会的状況において、①国体明徴運動的言説が社会や宗教界にどのような影響を与え/また与えなかったのか、②「国体」に関する言説・運動はどのように展開されたのかについて、宗教運動・社会運動・観光・移民といった諸領域の事例を比較検討し、近代日本の宗教とナショナリズムをめぐる「知」の諸相にアプローチすることを目的としています。


登壇者の先生方

 こうしたテーマのもと、寺田先生は、国体明徴運動が新宗教の思想・言説にどのような影響を与え、天皇と日本の意味づけにどのような変化が生じたのか、生長の家の谷口雅春の事例から検討しました。
 立教当初(昭和5年)の谷口は、天皇や日本に特殊な価値を認める言説をほとんど発信しておらず、教理も現実的な社会変革を目指すものではなく「心なおし」を中心とした唯心論的なものでした。昭和10年前後に至り、日本や天皇に関する言説の比重は増してきますが、その内容は、天之御中主神(宇宙の中心)=天照皇大神(太陽)=天皇(日本国)というラインによって天皇と日本皇室の優位性を示すといったものであり、この時期は天皇機関説等を批判する動きは見せていませんでした(一貫して批判したのは唯物論的思考)。また、これに関して、国家からの干渉や右翼団体等からの批判を受けることもなかったようです。
 さらに寺田先生は、谷口の言説を戦時下~戦後に至るまで検討し、表現に変化は見られるものの、そのロジックは立教当初から共通・一貫していることを指摘し、国体明徴運動が谷口の言説に直接的な影響を及ぼしたことは特定できないが、天皇と日本に関する言及頻度を高めたという意味において間接的な影響はあったと結論づけました。


寺田先生(左)ご発表の様子

 この他、神社や消防、仏教関係者と米国日系移民、「聖地」ツーリズムに関する発表が行われ、質疑応答においても「時間が足りない!」という声が出るほど活発な議論が展開されました。
 本パネルの発表が論文化されたものは、20183月に刊行された『国家神道と国体論に関する学際的研究―宗教とナショナリズムをめぐる「知」の再検討―』日本学術振興会平成2729年度科学研究費助成事業基盤研究(C)(研究代表者:藤田大誠、研究課題番号:15K02060)成果報告書に収録されています。
 なお、この報告書は、さらに拡充され、弘文堂から公刊される予定のようです。


▼第13部会「関与型研究の可能性と課題」

 本パネルでは、代表に東京工業大学の弓山達也先生、そしてパネリストには立教大学の河東仁先生、大正大学の吉水岳彦先生、天理医療大学の山本佳世子先生、総合研究大学院大学の君島彩子さんの計5名が登壇されました。
 本パネルは、関与型研究を「研究が対象と関わる形で調査・研究が進められていくもの」と定義し、それがもつ可能性と課題を、研究者であり実践家である4人の方々の発題を通して検討していくことを目的として組まれました。
 弓山先生は、関与型研究を宗教の社会貢献研究の一角をなすものであると考えられ、必ずしも自分の研究と貢献が結び付いていないチャリティ的貢献(CSR)ではなく、研究者の目的と対象の目的が合致した価値共有的貢献(CSVを目指すものとされていました。


発表される弓山先生 


 以上で、3回にわたって紹介してきた日本宗教学会第76回学術大会の報告を終了します。個人発表およびパネルディスカッションを含む全ての発表の要旨は、『宗教研究』第91巻別冊330日公開)に収録されています。

 また、本年度の第77回学術大会は、201897日(金)~9日(日)に大谷大学(京都府)において開催されます。
 日本宗教学会は、145の部会に分かれて様々な分野から発表が行われるため、最新の研究動向を幅広く掴めると同時に、自身の研究成果を広く公表することができる貴重な機会です。本学研究室では、発表の有無にかかわらず、積極的に参加することを推奨しています。
 宗教学や宗教に関する隣接分野の研究に興味・関心のある方は、ぜひ参加してみてください。

(文責:大場あや・塚越明香)

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